日本の給与水準はなぜ上がらないのか
日本の平均給与は、過去30年間ほとんど上昇していません。OECDの2021年のデータによると、日本の平均給与は世界24位まで落ち込み、アメリカの1.82倍、OECD全体の平均の1.38倍という状況です。
日本の給与水準が低下したわけではなく、他国が継続的に賃金を引き上げてきたため、日本との差が広がったのが現状です。特に、韓国、台湾、シンガポール、香港などのアジア諸国や、スロベニア、リトアニア、イスラエルといった地域が急速に成長し、日本の平均給与を上回るまでになっています。
一方で、日本の給与水準が近い国々には、ポーランド、エストニア、トルコ、ラトビア、チェコなどが挙げられます。これらの国々の多くは、かつては経済的に発展途上であり、日本とは大きな差がありました。しかし現在では、ほぼ同水準まで追いつかれ、さらに今後は逆転される可能性も指摘されています。
韓国やポーランドに抜かれる日本
1990年時点で、韓国の平均給与は日本の約61.3%に過ぎませんでした。しかし、その後の経済成長により、2015年には日本の給与水準を超え、2021年には1.09倍に達しました。
同じように、ポーランドも1995年には日本の給与水準の45.7%でしたが、2021年には84.5%まで上昇。今のまま推移すると、2029年には日本の平均給与を超える可能性があります。
日本の給与が上がらない根本原因
なぜ日本は、給与水準で他国に追い抜かれる事態に陥ったのでしょうか?
給与の本質は、企業が生み出した付加価値を労働者に分配することにあります。付加価値とは、売上から仕入れコストを引いたもので、その中から給与、税金、利息、配当、設備投資などが支払われます。
2019年のデータによると、先進国の平均労働分配率は56.8%で、日本は56.1%とほぼ同じ水準です。しかし、給与が他国よりも低迷している理由は、労働生産性の差にあると考えられます。
2021年のデータでは、日本の労働生産性は世界36位という低水準にあります。スペイン、スロベニア、チェコ、リトアニア、ギリシャといった国々よりも低いのが現実です。これは、経済成長が遅れた国々が生産性を向上させた一方、日本が長年停滞していたことを意味します。
実際、日本の労働生産性は1990年からほぼ成長しておらず、2021年の水準は1990年と比べてわずか2.2%の上昇にとどまっています。これに対し、アメリカは同じ期間に労働生産性を1.6倍に伸ばしています。
生産性向上なしでは豊かになれない
経済成長は、人口増加と生産性向上の2つの要素によって成り立っています。人口増加は経済規模の拡大には寄与しますが、生活水準の向上には直結しません。最も重要なのは生産性の向上です。
現在の日本は、少子高齢化によって人口が減少する一方で、生産性も伸び悩んでいます。その結果、年金や医療費の負担が増加し、現役世代の生活水準が低下し続けています。
この状況を打開するには、生産性を向上させる以外に方法はありません。そのためには、企業の設備投資、研究開発、人材育成への投資が不可欠です。
給与を上げるためにはイノベーションが不可欠
日本の給与が上がらず、他国に抜かれ続けている背景には、イノベーションの不足があります。イノベーションを生み出すためには、設備投資や研究開発への積極的な資金投入が求められます。
実際、1人当たりの研究開発費を比較すると、日本は世界12位に位置しており、トップは韓国、次いでアメリカ、シンガポール、台湾となっています。研究開発への投資が給与水準の向上に直結することは明らかです。
日本が今後、給与水準を回復させるためには、単なる労働時間の増加ではなく、技術革新や生産性向上への取り組みが求められます。そうしなければ、日本の給与は今後も国際的に低水準のままとなり、他国にさらに引き離される可能性が高まるでしょう。