金相場、上昇バイアス維持 米雇用統計の弱さが支援材料に

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金価格の短期見通し:慎重な楽観ムード

金相場はここ最近、狭いレンジ内での推移が続いているものの、ポジティブなバイアスが維持されている。Mirae Asset Sharekhan社で通貨・商品担当のシニア・ファンダメンタル・リサーチ・アナリストを務めるプラヴィーン・シン氏は、金価格の見通しについて「短期的には上昇余地がある」との見解を示した。

8月1日の急反発:米雇用統計と政治的不安

8月1日、米国の非農業部門雇用者数(NFP)が予想を大きく下回ったことで、金は大きな反転上昇を見せた。さらに、同報告の発表を受けて、トランプ大統領が米労働統計局(BLS)のエリカ・マッケンターファー長官を政治的偏向を理由に解任したことが報じられ、市場に衝撃を与えた。この政治的介入が、米連邦準備制度(FRB)の独立性や経済データの信頼性に対する懸念を投資家に抱かせている。

その結果、金は8月第1週の取引で金曜日に2.2%上昇し、週間ベースで0.7%の上昇となった。週明けの月曜日にはさらなる上昇を見せ、一時は1トロイオンスあたり3,385ドルに達した。ただし、リスク資産への投資意欲が高まる中、FRBによる利下げ期待が金の上値を抑える場面も見られた。

記事執筆時点で、スポット金は3,372ドル付近で取引されており、日中で約0.30%上昇している。インド国内では、ルピー安が進行したこともあり、MCX取引所の10月限金先物は1.41%高の101,161ルピーで推移している。

金先物は横ばい、弱い雇用統計を背景に上昇幅を維持

金の先物価格は、弱い米経済指標の影響を受けて上昇した後、現在はおおむね横ばいの動きとなっている。金先物は1トロイオンスあたり3,426.80ドル付近で推移。前週のNFPが予想を大きく下回ったことに加え、過去数か月の数値に大幅な下方修正が加えられたことが、市場に強い影響を与えた。

これにより、FRBによる金融緩和策が近いとの観測が強まり、利息を生まない資産である金にとっては追い風となっている。Pepperstoneのアフマド・アッシリ氏は、「金の上昇は、実質利回りの低下、投機筋によるショートカバー、新興国中銀による外貨準備の多様化といった複数の要因が組み合わさっている」と指摘。また、今後の金相場の持続的な上昇には、米ドルと米国債利回りの低迷、そしてインフレ率が市場予想に対して下振れすることがカギになるとしている。

非鉄金属市場は方向感乏しくまちまちの動き

一方、非鉄金属市場では方向感に欠ける展開が続いている。ロンドン金属取引所(LME)の3か月物銅価格は1トンあたり9,696.0ドルで前日比0.1%下落。一方、アルミニウムは2,576.0ドルで0.2%上昇している。

金融サービス会社Sucden Financialは、「8月初旬は例年、製錬所の定期メンテナンスや現物市場の取引が鈍くなるため、薄商いが続く傾向にある」と指摘。また、米ドルの上昇が海外投資家にとってドル建て商品の購入コストを押し上げ、金属価格の重荷になっていると分析している。

今後の注目点

今後、金相場の動向は米経済指標、特にインフレ関連の統計やFRBの政策スタンスに左右される展開が続くとみられる。短期的にはポジティブな要因が多く、レンジを上抜ける動きが出る可能性もあり、投資家は引き続き市場の動きに注視する必要がある。