日本の大手ファストフードチェーン「吉野家」は、これまでの主力である牛丼とうどんに続く“第三の柱”としてラーメン事業の拡大に注力する方針を明らかにした。今後5年間の成長戦略として、ラーメン事業の営業利益を現状の約10倍にあたる40億円に引き上げることを目標に掲げている。
この計画は、2029年度までにラーメン事業の売上高を400億円規模にまで成長させ、全体の売上構成比の13%を占める事業に育て上げるというもの。現在の構成比は4%にとどまっている。
新たなビジネス戦略は、国内外で食材価格が高騰するなかで打ち出されたものだ。とりわけ日本産の米やアメリカ産の牛肉といった主要食材のコスト上昇は、外食業界全体にとって大きな負担となっている。一方で、長年続いたデフレの影響により、国内では価格転嫁が難しい状況が続いており、各社は新たな収益源の確保に迫られている。
記者会見で新たな経営計画を発表した吉野家ホールディングスの成瀬哲也次期社長は、「ラーメン市場には大きな可能性があると感じている」と語り、事業拡大に強い意欲を示した。
成長の基盤として、吉野家はすでにラーメン事業の強化を進めている。昨年度には、京都を拠点とするラーメン店運営会社「宝産業」と「きらめきの未来」を買収。これにより、広島の「ウィズリンク」や東京・世田谷の「せたが屋」といった既存ブランドと合わせて、ラーメン事業のポートフォリオを一層強化した。
また、吉野家は2035年2月期までに「世界一のラーメン販売企業」を目指すという長期的な目標も掲げており、国内外での出店拡大を視野に入れている。既存の牛丼・うどんビジネスに加え、ラーメン事業を新たな成長エンジンとする構えだ。
ファストフード業界の競争が激化する中、吉野家は多角化戦略を通じて安定的かつ持続可能な成長モデルの構築を進めていく方針だ。