角界では世代交代の波が押し寄せ、新たなライバル関係が生まれる一方で、怪我からの復帰を目指す人気力士の姿や、引退した伝説的な横綱の新たな活動が注目を集めています。現在の相撲界の様々な動向を追います。
朝青龍、大の里との横綱決戦を制す
東京・両国国技館で開催された大相撲のワンデイトーナメント決勝戦で、横綱・朝青龍が同じく横綱の大の里を破り、見事優勝を果たしました。この一戦は、先月の秋場所で大の里が優勝を決めた優勝決定戦の再戦ということもあり、会場は大きな熱気に包まれました。
3年ぶり2度目の優勝を飾ったモンゴル出身の朝青龍(26)は、準々決勝で元関脇の若元春、準決勝ではモンゴル出身の元小結・欧勝馬を破り、決勝まで駒を進めました。敗れたものの、石川県出身の大の里(25)は試合後、「横綱同士の対決で会場がこれだけ盛り上がったのは良かった」と語り、前向きな姿勢を見せました。二人の若い横綱によるライバル関係は、今後の角界をさらに盛り上げていくことでしょう。
炎鵬、420日ぶりに涙の土俵復帰
7場所連続で休場していた元幕内の人気力士、炎鵬(29歳、伊勢ケ浜部屋)が、420日ぶりに本場所の土俵へ涙の復帰を果たしました。身長167センチ、体重100キロに満たない小柄な体から繰り出される多彩な技で土俵を沸かせ、かつては東前頭四枚目まで番付を上げた実力者です。
しかし、昨年夏場所を最後に脊髄損傷という大怪我に見舞われ、土俵から遠ざかっていました。一時は日常生活もままならないほどの重傷で、番付は序ノ口まで降下。復帰戦となったこの日、日大出身のホープ、清水海(境川部屋)に上手出し投げで敗れはしたものの、その姿は会場に詰めかけた約500人のファンを深く魅了しました。取組前から「炎鵬!」という声援が鳴りやまず、多くのファンが彼の帰りを待ち望んでいたことを証明しました。試合後、炎鵬は「(土俵に上がれて)最高です」と笑顔を見せ、周囲の支えに「感謝しかない」と涙を浮かべました。
引退勧告を乗り越え、照ノ富士の言葉を胸に
復帰への道のりは決して平坦なものではありませんでした。首の大怪我により、医師からは「相撲はあきらめてください」と引退を勧告されていました。炎鵬自身も、「引退を考えたことは…ありました。何十回、何百回も」と、当時を振り返ります。
しかし、彼は諦めませんでした。昨年末に実戦的な稽古を再開しましたが、その後、所属していた宮城野部屋が閉鎖。伊勢ケ浜部屋へ移籍すると、同部屋の横綱・照ノ富士から厳しい言葉を掛けられます。「このままじゃ無理だよ。その番付なりの相撲しか取れない」。大関から序二段まで番付を落としながらも不屈の精神で横綱へ昇り詰めた経験を持つ照ノ富士の言葉は、覚悟の甘さを指摘する厳しいものでしたが、同時に愛情に満ちた檄となり、炎鵬を奮い立たせる大きな原動力となりました。「命懸けと言ったら大げさだけど、いつ最後になってもいい覚悟」で臨むこれからの土俵。関取復帰への長く険しい挑戦が、再び始まります。
角界の伝説・白鵬、国際親善大使に就任
一方、土俵の外では、角界の伝説が新たな一歩を踏み出しました。大相撲史上最多の優勝記録を誇る元横綱・白鵬(モンゴル名:ムンフバティーン・ダワージャルガル)が、2026年秋にキルギスで開催される「第6回世界遊牧民競技大会」の親善大使に就任することが発表されました。現役を引退した後も、その影響力は日本国内に留まらず、国際的な舞台へと広がり続けています。